まったく、無茶な旅行だった。
高校卒業の直後に、クラスメイト全員が、たった一人の都合で、一緒に旅行をする。
それだけでも……いや、それはもう、それだけで十分に難しい事なのだけど。
――事もあろうか、その旅行計画が露呈してから7日後の今日。
僕らは既に3泊4日の旅を終え、都内に戻っていた。
僕達は忘れないだろう。
親愛なる、憎むべき、最強のクラスメイト達の事を。
途切れる縁もあれば、続いていく縁もある。
僕の隣に居る二人。
彼と彼女との絆は、これからも続いていく。
だが、自宅に帰宅した僕を待っていたのは――更なる別れ、だった。
それから、一年と四ヶ月が過ぎた。
奪われた日々は戻らない。
だが、仲間達と新たな家族によって、僕の痛みは日常に埋没していく。
それは多分幸せで、同時にとても不幸な事だ。
だが――絡んだ幾筋もの蔦によって、狂ってしまった歯車は、確実に日常を蝕んでいく。
現実が軋み、世界は歪む。
望まぬ扉《セカイ》が、顎《トビラ》を開ける。
仮初の日常は朱に染まり――偽りの安息は今、終焉を迎えた。